海商都市リヴァプール(世界遺産登録:2004年)

イングランド北西の町リヴァプールは、美しい湾岸の景観を持ち、産業革命時には英国の繁栄を支えた大港町として有名です。

それらの面影を残す区画や湾岸沿いの建物は、2004年に世界遺産に登録されました。

ただ、この物件に関していえば、肯定的な意味だけでなく「負の世界遺産」にも該当します。

「負の世界遺産」とは、人間が残した残虐な歴史を二度と繰り返さないように保存してある世界遺産のことです。

例えばポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所、日本では広島の原爆ドームなどが「負の世界遺産」に該当します。

リヴァプールは貿易港として繁栄し、その当時に造られた建築群は大変素晴らしいものばかりです。

しかも、それらが良好な状態で今日まで保存されています。

しかし、貿易の中核を担った取引の中に「奴隷貿易」がありました。

リヴァプールでは、ヨーロッパ・アフリカ・アメリカを結ぶ「三角貿易」が行われていて、アフリカの黒人とカリブ海の産物を取引して巨額の利益を生んでいました。

その貿易拠点は今も残され、二度とあってはならない歴史として後世に残す役割を担っています。

勿論、リヴァプールにはこのような負の歴史だけがあるのではありません。

中世の古い街並みが現存し、産業革命の時代にはそのほかの品々を取引したことによって多額の利益を得ました。

リヴァプールは、華麗な歴史と負の歴史の両方を今に伝えています。

海商都市リヴァプール -2-

世界遺産「海商都市リヴァプール」を構成するのは、

1. ピア・ヘッド
2. アルバート・ドック
3. スタンリー・ドック保存地域
4. キャッスル・ストリート保存地域
5. ウィリアム・ブラウン・ストリート保存地域
6. ロープウォークス

の6つの個別物件です。

これらの物件は、二度の世界大戦を経て、尚も大英帝国繁栄時の様子をよく留めています。

ピア・ヘッドは、世界遺産を構成する物件の中でも中心的存在で、その景観美は大変有名です。

ピア・ヘッドには「スリー・グレイシス」(優雅な3女神)と呼ばれるビルが立ち並び、それらが美しい景観を演出しています。

ピア・ヘッドの南に位置するアルバート・ドックは、世界初の完全耐火性倉庫があるところです。

木を全く使わずに造った世界初の倉庫は見応えがあります。

スタンリー・ドック保存地域には、歴史的価値のある多くのドックや橋梁などが残されています。

キャッスル・ストリート保存地域、ウィリアム・ブラウン・ストリート保存地域はそれぞれ商業街区、文化街区になっており、中世から現在に至るまでの重要な建築物が保存されています。

ロープウォークスはこの6物件の中で最も古くからあった場所で、船長や商人、職人たちが住んでいて、いち早く国際化したところとして知られています。

これらの6つの世界遺産を構成する地域を含め、リヴァプールには観光名所となる素晴らしい場所が幾つも存在します。

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